壮行会
ヒグッチー
こんにちは、【新潟市の印刷・WEB・企画のなんでも屋】ウィザップDTP部のヒグチです。
日々の愚痴を綴るブログ「グチブロ」にようこそ。
ここ数週間、娘の通う小学校から「インフルエンザによる学級閉鎖」を知らせるメールが頻繁に届きます。
今のところ娘のクラスは大丈夫そうですが、周りのクラスが次々と学級閉鎖を余儀なくされていっている中、いつかその順番が回ってくるのではと冷や冷やしながら見守っております。
そんな世間で猛威を奮うインフルエンザの魔の手は、弊社にも及んでいました。
被害を受けたのは我らがF山次長。
まさかのF山次長。
一報が入ったのは月曜日。
F山次長がインフルエンザを発症との報に騒然とするDTPフロア。
「え…!?F山さんがインフルで倒れた!?」
「嘘でしょ!?」
「意識はあるって。大事には至っていないみたい」
「良かった…」
取り乱し、泣きじゃくる者もいたが、容態は安定しているとの知らせに安堵する部員たち。
しかし、その後の誰かの言葉に、彼らは突きつけられた現実の過酷さに言葉を失うことになる。
「でも、こんな繁忙期に入ろうかという時期に、F山さん抜きで一週間も…」
「……!」
マウスが床に落ちる音が響いた。
「そんなの無理…」
「私たちだけじゃできない…」
「できっこないよ…」
ある者はキーボードに突っ伏し、ある者は呆然と窓の外の雪を虚ろな目で見つめていた。
彼らはF山の存在の大きさを間近で見ていたからこそ、その抜けた穴の深刻さもすぐに理解することができた。これまでもF山が出張などで1、2日留守にすることはあったが、今回は最低一週間。長引けばさらに。しかも繁忙期の波が押し寄せ始めたこの時期に、雪で普段通りの通勤もままならないこの時期にである。
部員たちの動揺、絶望は想像に難くない。
長い沈黙の最中、電話のベルが鳴る。
部のホープ平(たいら)が、泣き腫らして赤くなった目をこすりながら受話器を取った。
「…はい…平です…」
『お疲れ様でーす!次期社長こと東京支店営業部のエージでーす!すいませんF山さんお願いし…』
「…間に合ってます」
平は静かに受話器を置いた。
再びの長い沈黙。
時折、誰かのすすり泣く声だけがかすかに聞こえてくるだけだった。
そんなしじまを破るように、フロアのドアが開いた。
「さーせん!急ぎの修正頼みたいんですけど!」
ドアを蹴破るように入ってきたのは営業部の本間。
しかし、新人のオータキが彼の前に立ちはだかり、一言。
「すいません、重量オーバーです」
本間は何も言わず、すごすごとフロアを後にした。
再びの静寂。
窓の外しんしんと降る雪が、部員たちの絶望を積もらせていくようだった。
「一体…私たち…どうすれば…」
その時だった。
雪下ろしの雷鳴と共に、F山のMacが一瞬光ったかと思うと…!
(……きこえますか… きこえますか… DTP部員のみなさん… F山です… 今… みなさんの…心に…直接… 呼びかけています…)
「え!?F山さん!?」
「聞こえる…確かに聞こえる!」
「F山さんの声だ!?」
顔を見合わせる部員たち。
(……きこえますか… きこえますか… DTP部員のみなさん… F山です… 今… みなさんの…心に…直接… 呼びかけています…決して…諦めてはいけません…自分の力を…信じるのです…みなさんなら…できます…私が育てた…みなさんなら…できます)
それだけ告げると、声はパタリと止まった。
「今のは…一体!?」
「でも確かに聞こえた…」
狐につままれたような顔で辺りを見回す部員たち。
すると突然、駆け出すように自席に戻った平がキーボードを叩きながら叫んだ。
「みなさん仕事しましょう!F山さんのメッセージが聞こえなかったんですか!?」
その言葉に我に帰る部員たち。そして平に呼応するかのように口々に
「そうだ…やろう!」
「そうね!F山さんに恥をかかせるわけにはいかないわ!」
「俺たちならできる!だって、俺たちはF山チルドレンだ!」
さっきまでの静寂が嘘のように、熱気と歓声あふれるDTPフロア。
それを扉の影から見守る老紳士が一人。
「F山…いい部を作り上げたな…」
笑みを浮かべながらポツリつぶやくと、そのちゃんは階下へと消えたのであった。
そんな盛り上がるDTPフロアの中、若手のリナがあっけらかんとした口調から発した言葉で、部の空気は再び一変するのである。
「…え?」
「は?」
「マジで?」
フロアが怒号と罵声に包まれたのは言うまでもない。
(※この物語は事実を元にしたフィクションです。)
DTP部一同、F山さんの回復を心より祈念しております。
早く帰ってきてください!F山次長!